
「真実とはこの世界に既に存在している何かではなく、むしろ毎日のように再発見されるべきものなのです。」
これは、チャールズ・シミック(写真:右)が、自身のエッセイ"Poetry and Experience,"の中で、『(現代の詩人が)よく、「これは実際に私の身の上に起こった事なのだ。これは私が見た事であり、感じた事なのだ」と言う。』のに対して、語った言葉からの抜粋です。
今日は、そんなシミックが、私の世界には存在していない「真実」を見せてくれた詩を、ご紹介します。
House of Cards Charles Simic
I miss you winter evenings
With your dim lights.
The shut lips of my mother
And our held-breaths
As we sat at a dining room table.
Her long, thin fingers
Stacking the cards,
Then waiting for them to fall.
The sound of boots in the stree
t
Making us still for a moment.
There’s no more to tell.
The door is locked,
And in one red-tinted window,
A single tree in the yard,
Leafless and misshapen.
©2007 The Virginia Quarterly Review. All Rights Reserved.
“House of Cards” is part of the Summer 2005 issue of Virginia Quarterly Review
以下は、私なりの日本語訳です。
「トランプの家」 チャールズ・シミック
薄暗い明かりの
冬の夕暮れよ
おまえが懐かしい
母のきつく閉じた唇
ぼくらの押し殺した息
食卓を囲み座りながら
母の長く痩せた指が
カードを積み重ね、
それが崩れるのを待っている
通りから聞こえる長靴の音が
ぼくらを暫し静止させる
ただそれだけの話
扉には鍵がかけてあり、
薄赤く塗られた窓ガラスに
ただ一本の庭木
葉は全て落ちて、ねじ曲がっている
邦訳:アキコ・M・ウッド

さらりと読み流してしまいそうな詩ですが、作者がナチスドイツの圧力下の混乱期のユーゴスラビアで少年時代を過ごし、両親はコミュニストによる迫害から逃れる為にアメリカに亡命した、という背景を知った時、この詩は私の心にずしりとした重みを持って迫ってきました。
母親が子どもにトランプで家を作ってみせてくれた情景を懐かしむ以外に、何の感情の表現もありません。ところが、長靴の音が、ナチの兵士の歩く靴の音だという理解のもとに詩を読み直すと、「ただそれだけの話し」の中の一つ一つの言葉から全く別の意味と感情が伝わってきて、この詩を忘れることができませんでした。
シミックは、1953年15歳で、アメリカに来るまで全く英語を知らなかったそうです。29歳で“What the Grass Says ”を出版して以来、数多くの著書があります。1990年には、The World Doesn't End (世界は終わらない) でピュリッツアー賞を受賞しました。1973年から現在に至るまでまでニューハンプシャー大学で国語(英語)教授として勤務してています。
この先生の授業だったら、忍び込んで聴講してみたいなどと思ってしまいました...。
アキコ・M・ウッド (NCM2 CHOIR作詞担当) 2007年2月10日 ロサンゼルス
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